ウイルスに対する抵抗力を鍛える科学的な方法とは
こんにちは、高橋です。
新型コロナウイルスで、世の中がひっくり返ったような騒ぎになっていますね。
インターネット上では、特にツイッターを中心に、新型コロナを巡る言論戦やら情報戦が激しく繰り広げられています。
目がクラクラするほどの情報量に加え、何が真実で何が嘘なのか、各発言者の立場や利害関係が絡み合って大変カオスな展開になっており、不安と不信感、焦燥感が世の中全体に蔓延している感が禁じ得ません。
こうなってしまうと、自分の身は自分で守る!自己防衛の考え方が重要になるのではないでしょうか。
ということで今回は、急遽、免疫の力をアップさせる科学的アプローチについて調査した内容を整理して、皆さんと共有したいと思います。
ウイルスに対する免疫を担う細胞
人体の免疫は、多くの種類の免疫細胞によって構成されています。
特にウイルスに対する免疫では、次の免疫細胞が主要な役割を果たしています。
NK細胞
(ナチュラルキラー細胞)- ナチュラルキラー細胞。がん細胞やウイルス感染細胞を見つけ次第攻撃するリンパ球。
- 血液中リンパ球の10%~30%を占める。
自然免疫
というもので、速攻で作用する。
B細胞
- 病原体に特化した抗体を産生する(=作りだす)
- 特化した抗体が出来るようになるまで時間がかかる。
- 準備に時間はかかるが、効き目は抜群の抗体を作る(=これが
獲得免疫
というものです)
- 準備に時間はかかるが、効き目は抜群の抗体を作る(=これが
今回のエントリで取り上げるのは、NK細胞
を鍛える(=活性化させる)ための科学的なアプローチです。
免疫が人体の中でどのように作られるのか、その基本的な仕組みを踏まえ、解説して参りたいと思います。
NK細胞が働く仕組みを知ろう!
NK細胞
は、マクロファージ
と共に自然免疫
を構成する免疫細胞です。
自然免疫
は、生まれつき備わっている免疫で、体に侵入してきた病原体に対して即座に対応することができます。
NK細胞
は、ウイルスに乗っ取られた細胞やがん細胞を見つけ次第攻撃して、殺処分していきます。
これが生まれつきの殺し屋という意味のNatural Killer
という名前の由来になっています。
名前だけ聞くと、えらく物騒な印象を受けますが、健康を維持するうえで大変重要な細胞なんですよ。
NK細胞の働きが弱いとどうなるか・・・?
さて、このNK細胞
の働きが弱いと、どうなってしまうでしょうか?
すでに分かっている事実としては、
NK細胞
が働かないと、重篤なヘルペスウイルス感染を繰り返す!NK細胞
の働きが弱いと…- 風邪にかかりやすく、治りにくい
- 感染症での死亡率が高い
- がんになるリスクが高くなる
いやー、リストアップするだけでも、背筋が寒くなってきます。
風邪の主要な病原体の一つであるコロナウイルスに対する抵抗力も弱まるということが、容易に想像できますね。。。
ここで少し気になったのが、NK細胞
の働きの良い/悪いをどうやって測定するかということです。
何か良い指標はあるのでしょうか??
NK細胞の働きを測定するNK活性
(NK細胞活性
)
はい、ちゃんとあります。NK活性
(またはNK細胞活性
)という指標が存在します。
この指標は、何を意味するかというと、「4時間以内にNK細胞が、がん細胞を殺傷する割合」です。
- がん細胞を5個中4個殺傷すれば、NK活性=80%
- がん細胞を5個中2個殺傷すれば、NK活性=40%
- がん細胞を5個中1個殺傷すれば、NK活性=20%
というように、どれくらいの割合のがん細胞を殺傷できたかを測ったものです。
そろそろお分かりになってきたかと思いますが、ウイルスに感染した細胞を殺傷する力を上げることが、ウイルスに対する抵抗力を上げることに直結するわけです。
このNK活性
を上げることが、コロナウイルスへの抵抗力アップにおいて大きな意味を持つことになります。
NK活性
を左右する要因
さて、非常に気になるNK活性
を上げる方法ですが、それを知るにはNK活性
を左右する要因について調べることが必要です。
現在知られているNK活性
を左右する要因は、次の通りです。
-
年齢
- 20歳付近でピークを迎え、それ以降は年をとるほど
NK活性
が低下します。 - 60歳を超えると、ピーク時の半分ほどに落ちる傾向にあります。
- 年齢とNK活性の傾向(文献より引用)
- 20歳付近でピークを迎え、それ以降は年をとるほど
-
過度なストレス
- メンタルコンディションは、
NK活性
を大きく揺さぶります。
- メンタルコンディションは、
-
腸内環境
- 発酵食品に豊富に含まれる善玉菌が、
NK細胞
の訓練相手のようなものとなって、NK活性
を改善してくれます。 - 乳酸菌が腸の壁に取り込まれ、
NK活性
が改善する仕組みが確認されています。R1ヨーグルト
が有名ですね。
- 発酵食品に豊富に含まれる善玉菌が、
私たち自身でコントロール可能なものは、過度なストレスを抱えないようにすることと、腸内環境を整えること、ということが分かります(さすがに年齢は、自らの意思でコントロールするのは難しいでしょう)
今回のエントリでは、腸内環境を整えるアプローチで、NK活性
を改善する方法に触れたいと思います!
乳酸菌でNK活性
を高めて免疫を強くする仕組み
先ほど述べたように、乳酸菌を摂取すると腸の壁から取り込まれ、NK細胞
が活性化することが知られています。
具体的には次のような仕組みになっています。
- 腸の壁にある
M細胞
が乳酸菌を取り込む - 取り込まれた乳酸菌が
樹状細胞
やマクロファージ
に渡される 樹状細胞
やマクロファージ
が活性化し、IL-12
やIFN-γ
を分泌するIL-12
(※1)やIFN-γ
(※2)の作用でNK細胞
が活性化する。
また、樹状細胞
やマクロファージ
と接触したNK細胞
が活性化する。
※1 : IL-12(インターロイキン-12)
NK細胞刺激因子であり、NK細胞を著しく活性化する作用を持つサイトカイン。※2 : INF-γ(インターフェロンガンマ)
免疫細胞の一つヘルパーT細胞が分泌する免疫細胞を活性化する作用を持つ物質)
さて、なぜ乳酸菌には、このような有益な作用があるのでしょうか?
その秘密は、乳酸菌が分泌するある物質にありました。
乳酸菌が分泌するEPS(多糖体)がNK細胞を活性化させる!
乳酸菌が分泌する物質の何がNK細胞を活性化させるのでしょうか?
それはEPS(Extracellular Poly-Saccaharidesの略)
、日本語で言うと多糖体
という物質です。
EPS
には、免疫に活力を与える作用があることが確かめられています。
具体的には、次の作用となります。
INF-γ
の産生を促す働き- B細胞マイトジェン活性
- リンパ球を成長・増殖させる状態に引き金を引くことをマイトジェン刺激という。 参考
数多くある乳酸菌の中でも、最も多くEPS
を分泌する乳酸菌として知られているのが、おなじみのR1-ヨーグルト
に使われている1073-R1乳酸菌
です。
R1ヨーグルトの免疫活性の効果
R1-ヨーグルトは、免疫を活性化してくれるという認識は広く知られていますが、どれくらい効果があるものでしょうか?
R1-ヨーグルトを使った実験の報告の文献を見つけたので、その内容をご紹介したいと思います。
マウスを用いた実験が示すNK細胞活性化の効果
マウスへのマウスへの経口投与実験で、NK細胞の活性が向上する効果が示されました。
具体的には、インフルエンザに罹患させたマウスでの実験を、北里大学と明治の共同実験として実施しました。
- 実験内容
- インフルエンザH1N1亜型ウイルスに感染したマウスを次の二つのグループに分けた。
- ウイルス摂取21日前から4日前までにR1ヨーグルトを摂取させたグループ
- 蒸留水を与えたグループ
- インフルエンザH1N1亜型ウイルスに感染したマウスを次の二つのグループに分けた。
実験の結果は次の通りでした。
-
蒸留水を与えた群は、7日目から死亡し始め、
9日後
に全個体が死亡。 -
R1ヨーグルト摂取群は、ウイルス接種後21日の生存率は
37.5%
-
EPSだけ与えても、
11%
が生き残った。
ということで、インフルエンザウイルスに対する抵抗力が、あきらかに強くなっていることが示されました。
これは、心強い知見です。
NK細胞を活性化させることによる、健康上のメリットを確信させてくれます。
あとは、人間でも、ちゃんとNK細胞が活性化されることが分かれば、エビデンスが補強され、てさらに安心できますね。
ヒトを体でもNK細胞が活性化した
今回紹介する文献では、ヒトを対象とした実験についても報告がされていました。
二つの町で、健康な高齢者の方に実験に協力してもらっています。
-
実験概要
- 健常高齢者57名+85名を無作為に次の2グループに分けました。
- R1ヨーグルトを1日90g摂取するグループ
- 牛乳100mlを摂取するグループ
- 8週間~12週間摂取後にNK活性を比較しました。
- 健常高齢者57名+85名を無作為に次の2グループに分けました。
-
実験結果
- NK活性がもともと低いグループで、両方のグループで、NK活性の向上が見られました。
- NK活性が高すぎるグループは、両方のグループで、NK活性が低下しました。
- NK活性を一定水準に近づけるという作用が観察されました。
牛乳を飲んでも、ヨーグルトを摂取してもNK活性が改善(適正化)される傾向が示されています。
乳製品を摂取しないグループとそうではないグループに分ければ、より鮮明な比較対象実験になった印象を受けますが、乳製品にNK細胞活性を改善する作用があることは把握することができそうです。
(さすがに人間相手に、マウスと同じような食事制約を課すのは人道的にも難しいでしょうね。。。)
まとめ
今回は、ヒトの体の免疫(NK細胞による自然免疫)を活性化する仕組みについて、文献や論文、調査資料をもとにお届けしました。
医食同源 という言葉がぴったりと来るメカニズムであったと思います。
腸というのは、消化吸収だけにとどまらず、高度な機能・役割を持っていることを実感させる内容でした。
腸内環境は非常に重要であると、確信をさらに深めた次第です。
私は、ヨーグルトメーカーを購入して、R1ヨーグルトの量産体制を確立し、毎日数百グラム(200g~400g)を摂取するようにしています。
健康なうちに、しっかりと免疫を鍛えておき、いざという時に備えたいものですね。