オバマ政権、武漢ウイルス研究所へ資金援助の疑い
4月中旬以降、米国では、武漢ウイルス研究所への資金援助の疑惑で大騒ぎになっています。その概要は以下の通りです。まずは、スライドで全体像を把握なさってください。
- 2014年、オバマ政権は武漢ウイルス研究所に370万ドルの資金援助をした。
- 2014年、オバマ政権は、米国内におけるウイルス研究を禁止する方針を打ち出していた。
- 現在、トランプ政権の新型コロナ対策チームのリーダーを務めるアンソニー・ファウチ博士は、国立アレルギー・感染研究所(NIAID)の所長であり、武漢ウイルス研究所への資金援助を主導した。
- 2014年から始まったプロジェクトは、蝙蝠からコロナウイルスを収集するための研究であり、2019年に完了した。
- その研究では、武漢ウイルス研究所のShi Zheng-Li(石 正麗)氏を中心とする研究者に資金を提供し、野生の蝙蝠由来のコロナウイルスの調査が行われた。
- 2019年、米国立衛生研究所は、ファウチ博士率いるNIAIDの支援の下、武漢ウイルス研究所などの研究者に、蝙蝠由来のコロナウイルスの機能獲得研究のための資金を提供した。
- 米国民の税金で、なぜ中国の武漢ウイルス研究所に資金援助をしなければならないのか、説明を求める声が米国で高まっている。
2014年~2019年にかけて、蝙蝠由来のコロナウイルスを収集し、2019年から集めたコロナウイルスに対して機能獲得研究 をしていた、それも米国の資金を使ってです。
この騒ぎを受けて、米国立衛生研究所は、武漢ウイルス研究所への資金提供を全て停止しました。(2020年4月下旬)
機能獲得研究が2019年に始まり、2020年の年明けから武漢で新型コロナの大感染が発生しました。
この機能獲得研究は、偶発的にパンデミックを引き起こすリスクがあるということが、以前から科学者の間で知られており、多くの科学者から批判される危険な研究というシロモノです。
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機能獲得研究:偶発的パンデミック発生のリスクを伴う研究内容とは
機能獲得研究とは、ウイルスを操作して人間へ感染する潜在力・可能性を探るという研究です。
今回の件では、蝙蝠由来のコロナウイルスがどのように変異して、ヒトへ感染する力を獲得するのかを研究することを指します。
ラトガース大学の感染症専門家リチャード・エブライト氏によると、研究プロジェクトの説明では、遺伝子工学の技術を用いて、ヒトの細胞や実験動物に感染するコロナウイルスの能力を高める実験をすることを指しているとのことでした。
ひたすらコロナウイルスの変異を促し、蝙蝠からヒトへ種を越えた感染力を持つ変異株を探したという解釈ができます。
まるでウイルスの変異ガチャですね。
私たちにもう少しなじみがある言葉で表すと、ウイルスの品種改良(=改悪?)と言い換えることができます。
本来ウイルスが持っている変異能力を刺激し、変異を促し、種を越えた感染力を持つウイルス株を探したわけですね。
実験室の中で、人工的なパンデミックの誕生を試みたということになります。
そうすることで、パンデミック発生のメカニズムを解明すると言う大義名分もありますが、その危険性は言うまでもありませんね。
2019年から機能獲得研究を始めて、翌年には新型コロナのパンデミック発生という、絶妙なタイミングの良さは、不思議ですね。
機能獲得研究はどのように進められたか
2019年から始まった、蝙蝠由来のコロナウイルスに対する機能獲得研究プロジェクトは、米国の非営利研究グループ「エコヘルス・アライアンス(coHealth Alliance)」によって監督され、運営されました。
米ポリティコ誌が報じるところでは、2020/04/24に米国立衛生研究所は、このプロジェクトを中止したとのことです。
なんと、この間までプロジェクトが進行していたのですね。
エコヘルス・アライアンスのピーター・ダスザック(Peter Daszak)代表は、Newsweek誌からコメントを求められたが、今のところ回答は得られていないとのことです。
不透明なレビュー体制
オバマ政権時代に中止されていた研究は、モラトリアム期間が解けた 2017年12月 から再開されました。
機能獲得研究を含むNIAIDの研究プロジェクトは、次の研究フェーズに進んだのでした。
プロジェクトの再開にあたり、担当する研究者は、研究のリスクが妥当なものかどうか専門家パネルから承認を得なければならない、とされました。
しかし、実際は審査プロセスは密室で行われており、機能獲得研究に反対する科学者たちは、ワシントンポスト紙の社説を通して米国立衛生研究所の姿勢を非難する声明を発表しました。
「このような実験が全く行われるべきかどうか、我々は重大な疑問を持っています」
「審議が非公開のままでは、政府がどのようにしてこれらの決定に至ったのかを理解したり、そのプロセスの厳密さと完全性を判断する機会は誰にも与えられないのです」
(ジョンズ・ホプキンス大学のトム・イングルスビー氏/ハーバード大学のマーク・リプシッチ氏)
オバマ政権・危険なウイルス研究を中国にアウトソーシング
2014年にオバマ政権は、米国内におけるウイルス研究を中止させました。
具体的には、米国疾病対策センター(CDC)で、非常に感染力の高い病原体の処理を誤ると言う事故が繰り返されたからでした。
そこで、ファウチ所長が中心となり、中国の武漢ウイルス研究所と協力関係を構築し、先ほど述べた機能獲得研究を武漢ウイルス研究所にアウトソーシングすることになりました。
なお、武漢ウイルス研究所はフランスの資金協力の下に建設され、今回蝙蝠由来のコロナウイルス研究を担当した研究者は、オーストラリアの研究機関で訓練を受けたことがすでに報じられています。
トランプ政権の動き
しばらく前、今回のウイルスは人工的に作られたのではないかという、人工ウイルス説が話題に上りました。
現在では、トランプ政権も、ウイルスは人工ではないことを認めるスタンスを公にしています。
どうも、トランプ政権は前オバマ政権時代に始まった一連のウイルス研究について、あまり把握していなかった節が見られます。
人工ウイルス説が米国で話題の注目を集めていた時、ファウチ所長は「ウイルスは蝙蝠から人間へ感染しやすい可能性が高いことを示す研究をすでに実施している」として、人工ウイルス説を否定しました。(2020/04/18のホワイトハウスの政権ブリーフィングにおいて)
これが先ほど述べた機能獲得研究のことですね。
米国諜報機関も
「COVID-19ウイルスが人工的または遺伝子組み換えウイルスではなかったという科学的なコンセンサスに同意する」
と声明を発表しています。ただし、
「パンデミックの発生が武漢の実験室での事故の結果であった場合、感染動物(=蝙蝠)との接触を通じて始まったかどうかを判断するために、"新たな情報を厳密に検討する"ことを継続する」
とも付け加えています。
オバマ政権時代に始まった、機能獲得研究の武漢ウイルス研究所へのアウトソーシングの件を、徹底的に調査するという姿勢をほのめかしていることがうかがえます。
そして、本日、トランプ大統領は新しい事実を見つけ、新型コロナウイルスの起源が武漢であることを断定する強い調子の声明を発表するに至ったわけです。
ファウチ局長と米国立衛生研究所の姿勢
Newsweek誌は、武漢ウイルス研究所への資金提供に件についてファウチ局長にコメントを求めたものの、返事はまだ得られていません。
米国立衛生研究所は、以下の内容の声明をNewsweek誌に伝えました。
新興のヒトウイルスのほとんどは野生動物に由来するものであり、2002-03年のSARSの流行や現在のCOVID-19のパンデミックが示すように、米国および世界的に公衆衛生と生物安全保障に対する重大な脅威となっています……科学的研究では、ウイルスが実験室で(人工的に)作られたことを示唆する証拠がないことを示しています。
オバマ政権下で進められた武漢ウイルス研究所への資金提供や、機能獲得研究を擁護する姿勢でした。
米国メディアの姿勢
記者会見では、激しい非難をトランプ大統領に浴びせるマスメディアの記者たちですが、ファウチ局長と武漢ウイルス研究所の間の資金的なつながりについて質問をする様子はありません。
ただ、最近は米国メディアのも一枚岩ではなく、ファウチ局長と武漢ウイルス研究所のつながりについて取材を始めるメディアが出てきています。(だからこそ、今回のエントリを書けたわけです)
なんだか、開けてはいけないナントカの箱を開けてしまった感がありますが、世界中の人々が抱えている新型コロナウイルスに対するモヤモヤとした疑問が、クリアに解明されるのが待たれます。
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