2019年の自然薯栽培を振り返る
2019年、自然薯の栽培は無事に成果を出すことができました。
2019年12月から掘り起こしたのですが、いずれも1mを超える大物でした。
赤土粘土層をパイプの中に詰めたおかげで、自然薯の表面の肌も滑らかで、質の高い仕上がりが手触りの感触から伝わってきます。
今年の自然薯の栽培経験の内容を整理し、知見に昇華すべく、ブログ記事にまとめたいと思います。
自然薯掘り起こしギャラリー(抜粋)
自然薯栽培ギャラリー
自然薯栽培記録
畝(うね)を作る
2019年4月末からゴールデンウィークを使って、自然薯を植える畝(うね)を作りました。
自然薯の畝を作る際に欠かせないのが、クレバーパイプという自然薯・長芋栽培用の塩化ビニル製のパイプです。
楽天で注文したクレバーパイプが、ちょうど4月末に到着しました。
到着したクレバーパイプは、自然薯用のもので、135cmの長さを持ちます。
オンラインショップや自然薯栽培の記事で見た時は、柔らかい素材感を持っていると思っていたのですが、実物を触れてみると、強靭さと弾力を兼ね備える質感を持っていました。
取り出して持ち運ぶ際には、素手ではなく軍手を付けた方が賢明でしょう。
バネの効いた形状維持力を持っているので、勢いを付けて元の形に戻ろうとするので、気を付けましょう。
クレバーパイプが届いたので、畝の準備を始めます。
クレバーパイプを敷設する溝を掘る
まず、自然薯の畝にする畑の領域を耕運機で良く耕しておきます。
そこに溝を掘る際の目印になるラインを引きます。
真っすぐな棒を使うと良いでしょう。私は、キュウリなどの栽培で使う緑色の支柱を使いました。ホームセンターで手に入ります。
ラインを引いたら、ラインに沿って溝を掘って行きます。
管理機という決まった幅の溝を自動で掘ってくれるマシンがあると非常に作業が楽です。
ない場合は、スコップで頑張ります。なかなかの足腰と背筋、上腕の筋トレになります。
作業後のタンパク質摂取は忘れないようにしておきたいですね。
溝を一通り掘ったら、実際にクレバーパイプを置いてみて、溝の幅や深さ、溝の開始地点における角度といった様々な項目を確認します。
特に溝の開始地点における溝の角度は重要。今回は、20度前後を目安に調整をしました。
浅すぎると、自然薯の芋がクレバーパイプの中に入ってくれないことがあるので、一定の角度が必要です。
角度が大きい分には良いですが、溝を掘る作業の負荷が大変になるので、トレードオフの関係にあります。
溝を掘り終えたら、クレバーパイプの中に赤土(または川砂)を詰めていきます。
今回は、身近で手に入る赤土を使いました。いわゆる関東ローム層の赤土ですね。
有機成分が少なく、病害虫が入り込みにくい環境をクレバーパイプの中に形成することが重要な目的です。
特に、センチュウ類が繁殖しやすい環境になってしまうと、自然薯の芋肌が荒れてボコボコになってしまうので注意が必要です。
ここはひと手間かけて、赤土を集めて、クレバーパイプの中に詰めるのが良いでしょう(追記:実際のところ、赤土の中で育った自然薯の芋肌は、どれも滑らかでした!)
クレバーパイプの中に赤土を詰めて、溝に並べて行きます。
その際、クレバーパイプを溝に立ててから、赤土を詰めると良さそうです。
溝に立てて赤土を流し込めば、クレバーパイプの末端から詰めた赤土が流れ出す心配が減ります。
赤土でクレバーパイプの中を満たしたら、ゆっくりと倒して横に傾けて、溝に並べてゆきます。
赤土を詰めたクレバーパイプを並べ終えたら、畑の土で溝を埋め戻します。
クレバーパイプの頭の部分が地表に顔を出すくらいに、土で溝を埋めます。
スコップで頑張りました。なかなか良い運動量になります。
目印の棒を立てる
続いて、自然薯の苗を設置する場所の目安にする目印の棒を立てます。
この棒が無いと、苗を植える場所を間違えて、自然薯の芋がクレバーパイプを逸れて地中深くに伸びてしまうという困った事態に陥るリスクが高まります。
今回は、畑の近くで手に入る篠竹で棒を仕立てました。
棒の長さは、25cm~30cmを目安に加工しました。
写真のように、棒をクレバーパイプの頭の部分、受け口のように広がっている部分の中心に立てていきます。
棒が倒れないように、赤土を手で押し固めて棒を固定すると良いです。
同じ要領で、次々と棒を立てていきます。
目印の棒を立て終えたら、畑の土でクレバーパイプの頭の部分を覆います。
覆う表土の厚さは、3cm~5cmを目安にしました。
自然薯の苗の植え付け
自然薯の苗の植え付けの時期は、地域差がありますが5月に入ってからになると思います。
那須に自然薯の苗が届いたのは5月末でした。
届いた苗は、切り芋苗でした。
自然薯の切り芋苗とは、自然薯の芋を切って、発芽させたものです。
今回は、二種類の切り芋苗が届きました。
自然薯の首の部分を含む長い切り芋苗と、通常の切り芋苗です。
長い切り芋苗の植え付け
文字通り、首を長くして自然薯の苗の到着を待っていたところ、5月末に宅急便が届きました。
段ボール箱に貼ってある伝票を見ると自然薯の苗であることが記してありました。
段ボール箱を開封すると、内部はおがくずで満たされていました。
自然薯は大変折れやすい
ので、慎重に取り扱う必要があります。
誤って自然薯の苗を追ってしまわぬように、おがくずを少しずつ取り出しながら、苗の配置を指先の感覚で把握していきます。
段ボール箱の中の自然薯の苗の配置を確認したら、畝の近くに段ボール箱を持ち運びます。
先日クレバーパイプを敷設した畝の表土を少し削ります。
湿った土の表面が顔を出せば十分でしょう。
自然薯の苗は乾燥を嫌う
ので、湿度のある表土に植えておきたいところです。
自然薯の苗の発芽部分(ここでは苗の頭)を、目印の竹の棒に添えて設置したところです。
苗の頭の部分に、白く膨らんでいる所が見えますが、ここが発芽している箇所です。
自然薯の芋は、発芽箇所から真下に伸びてゆく性質
があります。
念には念を入れ、使えるものは使おう、ということで、梱包されていたおがくずで、自然薯の苗を覆って防御を固めておきます。
木質なので、適度な水分を保つ力に優れています。
上記の要領で、他の苗も次々と目印の竹棒に沿って設置し、おかくずで保護していきます。
10cmぐらいの厚さ
を目安に畑の土で覆って、自然薯の苗の定植の仕上げとします。
通常の切り芋苗の植え付け
通常の切り芋苗は、自然薯の芋を5cm~10cm
の長さに切ったものです。
今回は、苗床で発芽させた切り芋苗を使うことにしました。(発芽させるまでの手間を省力化できました)
届いた段ボール箱を開封すると、おがくずに覆われて自然薯の切り芋苗が入っていました。
以下の写真は、その切り芋苗のもので、頭から発芽している白い部分が確認できます。
この発芽部分を目印の棒に添えるように設置していきます。
発芽している箇所は、切り芋苗ごとに違っています。
各切り芋苗ごとの発芽箇所を確かめ、目印の棒に添えるように設置していきます。
以下の写真では、2か所発芽箇所が確認できます。(白い部分です)
発芽箇所のうち、写真上で見て左側のものを目印の棒の位置に合わせて、設置しています。
同じ要領で、発芽箇所を目印の棒に添えるようにして、切り芋苗を設置していきます。
設置が終わったら、畑の土で厚さ10cmほど
覆って、切り芋苗の植え付けを完了します。
定植後のメンテナンス
自然薯の苗の定植を終え、一仕事やり切った感が満載ですが、自然薯の栽培では恐らくここからが本番です。
夏場にどれだけ地上部分(蔓と葉)を成長させ
、光合成量を増やし、芋に栄養を蓄える体制を整えることができるかが、収穫の成果を左右する重要なポイントになります。
ここから先は、雑草との闘い
や、畝の乾燥への対応
といった手間暇のかかる困難な過程が待ち構えています。
それらの難しい過程をいかに合理的に、効果的に、創造的に乗り越えるか──いろいろ策を考えた結果、刈り取った雑草で畝をカバーする、草かけマルチ
というアプローチに挑戦しました。
以下がその写真です。
畝周辺で刈り取ってきた多種多様な雑草、および畝から引っこ抜いた雑草をカバーのように敷き詰めて
いきます。
6月に入ると日差しも次第に強くなるため、刈り取ったり引き抜いた雑草はすぐにチリチリに乾燥して
いきます。
特有のさわやかな発酵臭らしきものが、数日もすると立ち込めるようになります。
畝に草かけマルチをすると、本当に雑草が生えてきません!
結論からすると2019年を通して、防草効果をハッキリと体感できました。
これはメジャーな発見の一つですね、来年も継続して取り組みたい手法です。
周囲の雑草を刈り取っては、どんどん畝に重ねてカバーをしていきます。
雑草の場合、落ち葉よりも分解が早く
、2か月もすると溶けてなくなってしまいます。
この後で述べますが、分解が早いおかげで、雑草が含んでいたミネラル分がスピーディーに自然薯に供給される
ためか、自然薯の生育が一気に加速します。
2019年の自然薯栽培で得られた大きな発見の一つです。
自然薯の生育状況
夏の生育状況(7月~9月)
以下の写真は2019年7月上旬に撮影したものです。
葉よりも先に蔓が、竹の支柱に縦横無尽に巻き付いていきます。
こちらは7月下旬の自然薯の様子です。
蔓が支柱に収まりきらず、空中にまで伸びています。まるで隣の支柱まで手を伸ばしているようです。
蔓がしっかりと発達すると、葉っぱが一斉に生い茂り始めます。
こちらは8月下旬の自然薯の様子です。
葉っぱがさらに増えています。
この頃から、生育スピードが加速していることを体感し始めます。
ちなみに草かけマルチをした畝には、雑草がほとんど生えていません。
本来であれば雑草との闘いが最も激しい真夏でも、雑草が生えてこないので、手間がかからず非常にありがたいです。
こちらは、下から自然薯の地上部を見上げた時の写真です。
垂れ下がった蔓にも葉が生えてきて、立体感が増しています。
8月中旬にもなると、葉と蔓が網の目のように生い茂り、文字通り緑のネットが形成されてきます。だんだんと、竹の支柱が重さで垂れてきています。
こちらの写真に写っている竹の支柱も、湾曲して、重みでしなっています。
試しに支柱を手で持ってみると、ズッシリとした重量感が伝わってきます。
8月末にもなると、びっしりと葉が生い茂り、支柱の姿がすっかり隠れて、緑色のオブジェと化しています。
支柱はしなやかに湾曲し、蔓と葉に完全に覆われています。その姿は、まさに分厚い深緑のカーテンです。
手で支柱を持ち上げてみると、本当に重い! まるで人が一人、全身を寄りかけてくるような重さです。
支柱が隣接するのり面の方にしなだれ、緑のアーチ、トンネルのようになっています。
残暑の厳しい日差しもばっちりガードしてくれます。
9月下旬、自然薯の葉は順調に生い茂っています。
秋の生育状況(10月)
10月下旬、秋でもまだまだ青々としています。
光合成は、あと半月ほどは続きます。
まだ紅葉になる気配は見えません。
グリーンのカーテンは、まだズッシリと重量感を維持しています。
芋の成長のラストスパートに期待です!
10月下旬でも、生い茂る葉と蔓の勢いに陰りは見えません。
近くにある電柱まで手を伸ばして、巻き付いています。
晩秋の生育状況(11月)
11月中旬になると、自然薯の地上部がようやく枯れはじめ、黄色や茶色に色づき始めます。
11月に中旬にさしかかると、那須では0度近くになる日がチラホラと出てきて、その低温がトリガーになっているのでしょう。
枯れ始めた葉の間にむかご(=漢字で書くと零余子)を見つけました。
暗い灰色でツヤツヤの表面のむかごです。
このむかごを植えると、1年で一本苗に成長します。
11月下旬、地上部はほぼ枯れてきました。
枯れた葉に囲まれてむかごが佇んでいました。晩秋の季節感を強く感じさせるワンシーンです。
自然薯のむかごを拾い集めました。
ツヤツヤの表面で、コロコロと丸い形状です。どことなく、質の良さを感じさせるビジュアルです。
本格的に冬が到来する前に、土中に埋めて保存しておきます。
自然薯の試し掘り(12月上旬)
地上部が枯れて2週間ほど経過した、12月上旬、自然薯の生育の成果を確かめるべく試し掘りをしました。
12月上旬、すっかりと枯れた自然薯の地上部分です。
霜が何度か降りてきており、冬の景色に様変わりしています。
那須の冬空です。
ピリッと肌が引き締まるような気温です。
枯れた自然薯の蔓を指先でたどりながら、掘る場所の見当を付けます。
自然薯の蔓は、枯れても頑丈な手ごたえを残しています。
畝を慎重に、少しずつ削るように掘ります。
すると、クレバーパイプの先端が顔を出しました。
軍手をした手で土をかき出しながら、自然薯の芋を探します。
すると、自然薯の芋の首の部分が見つかりました。
ちゃんと、クレバーパイプの受け口に芋は入って行っているようです。
クレバーパイプから外れた場所に芋が伸びてしまうと、掘り起こしが非常に大変になるので、安堵ひとしおです。
クレバーパイプを地中から取り出しました。
この中に自然薯の芋が育って入っているはずです。
クレバーパイプを揺さぶり、中に詰まった赤土を少しふるい落とすと、白い自然薯の芋肌が姿を見せました!
無事にクレバーパイプの中に自然薯が収まっているようです。
クレバーパイプから自然薯を取り出して地面に横たえました。
白いひげ根がびっしりと生えています。
まとわりついた赤土を払いのけてゆくと、自然薯の全体像が見えてきます。
手元にあったハガキ大の紙を目安に、大まかな長さを計測します。
自然薯の長さは、1mを超えています。
長さの比較のために置いた軍手は、約25cmです。
もう一本、クレバーパイプを掘り起こしてみます。
サンプル数を一つ増やして、自然薯の長さを調べてみたいと思います。
最初に掘った1本が、たまたま1m超えの大物だった、偶然だったのか、どうか明らかにしたいと思います。
掘り起こしたもう1本も、1mを超える大物でした!
地面に2本並べてみました。
自然薯は柔らかく、みずみずしい一方で、簡単に折れてしまいます。
取り扱いには慎重にならなければなりません。
クレバーパイプの中に自然薯を入れて、折れないように支えて運ぶことにしました。
家にあったデジタルはかりで重さを軽量します。
上限1kgのデジタルはかりですが、測定不能の表示が!
1kgを超えているのは確実です!
井戸水で自然薯を洗い、農作業用のかごの上に並べました。
白い芋肌が確認できます。センチュウ等の病害虫に侵食されている様子はありません。
赤土でクレバーパイプの中を満たしたことが、自然薯の芋の保護につながった模様です。
(後で分かったのですが、畑の黒い土の中に伸びてしまった自然薯の芋肌は、少し荒れていました。自然薯の芋を取り巻く土の種類によって、芋の質にどのような影響が出るのか、その顕著な違いを確かめることができました)
井戸水で洗い終わった自然薯を、家のテーブルの上に並べました。
テーブルにギリギリ収まるかどうかの長さです。
メジャーで計測したところ、今回の試し掘りで掘り起こした2本の自然薯は、140cm台の超大物でした!
自然薯栽培、無事成功の模様!
2019年の自然薯栽培は無事に、成果を伴った収穫のうちに終えることができました。
振り返ってみると、夏場の雑草退治の負担も少なくて済みました。
時々帰省した際に様子を見て、少し生えている雑草を引き抜いては、草かけマルチの上に広げるぐらいでした。
肥料は、ほとんど与えていません。刈り取った雑草を敷き詰めたぐらいです。
掘り起こす際も、クレバーパイプのおかげで、重労働をすることなく、自然薯を掘り起こすことができました。
むかごから育てた1本苗も順調に育ち、25cm~30cmの長さになり、来年の苗に使えそうです。
冬の間は、畑の中で寝かせた自然薯の味が熟成するので、掘り起こすのが楽しみです。
自然薯料理のブログエントリを、この後、アップしようかと考えています。
このブログエントリをご覧になっている方で、自然薯栽培をしようとしている方がいたら、何かしらの参考になればうれしいです!