時流観察エントリの開始について
最近、この1カ月は、物事の変化するスピード、我々を取り巻く事態の進む速さが、未曾有の域に達しているように感じられてなりません。
本当は、じっくりと調べて検証しながらブログ記事をアップロードしていこうかと思っていたのですが、それではタイムリーなコンテンツの発信にはなり得ず、読み手の方々にとって情報的利益を適切に提供できないようです。
そこで、機動的な情報発信を試みるべく、時流観察
というカテゴリのエントリをスピーディーにアップしてまいりたいと思います。
拙速な部分を含みつつも、タイムリーな情報伝達を優先し、いわば見切り発車的なコンテンツ発信となりますが、誤りや新事実が確認でき次第、随時修正して対応するスタンスを採りたいと思います。
今回は、第一弾として、現在世界の金融市場で起きている異変(すでに皆さんは痛感・実感されていると思いますが)、その中でもETFの市場で何が起きているのか、それをよく表す良い海外記事を見つけたので、私のつたない英語リテラシーで翻訳&咀嚼して、内容をご紹介したいと思います。
金融市場(ETF市場)で何が起きているのか
今回紹介するのは、BlackRock Bond ETF Plunge Shows How Fast Traders Can Be Spooked という記事です。
この記事は、現在金融市場で起きている現象を説明するうえで、実に良い例を取り上げています。
具体的には、世界最大級のヘッジファンド・ブラックロック
の旗艦ETFに起きている歴史的な下落と、それに伴う資金流出の動きの背景について触れています。
投資をしている方であれば、一度は耳にしたことがあるであろうあのブラックロック。
そのブラックロックでさえ今回の信用収縮の危機から逃れることはかないませんでした。
前例のないスピードで、投資家たちの心理は縮みあがり、それは資金流出という形で表に現れました。
ブラックロックのETFが直面する事態
このブラックロックのETF、iShares Short Maturity Bond ETF
という銘柄なのですが、2020/3/19 のマーケットで8.9%
の下落を見せました。
この下落幅は、2019年の同ETFの日中の最大下落幅の約34倍という、とんでもないどころではない、統計的に見ても異例という言葉では表せないほどの大きな値です(2019年の日中最大下落幅は 0.26%!)
その日は最終的には 6.2%
の下落に落ち着きました(それでもとんでもない下落幅です)
投資家の間に広がる疑念:現物支給されても困ってしまう
ブラックロックのETFは、償還までの期間の短い短期債券をポートフォリオに組み込んでいるのですが、現金による償還が出来なくなっているという疑惑が生じています。
2020/03/19 の暴落の際、ブラックロック側が現金による償還に応じたので、多少は下落の勢いが緩和されたのですが、投資家の間に広がった疑念は晴れていないようです。
どうやら、Bloombergの取材に応じたマーケットメイカーが匿名で伝えたところでは、現金による償還ではなく、現物の債券
による償還が実施されることになった模様で、投資家にとっては椅子からひっくりかえるような衝撃だったことでしょう。
こんな暴落相場で、どんどん目減りしている債券をポン!と手渡されたところで、どうすればよいのでしょうか??
「お好きなタイミングで換金してください」と言われても、なかなか買い手がつかない状況です。
火消しに追われるブラックロック
ブラックロック側は、投資家の疑念を晴らすべく、火消しに懸命です。
「(ブラックロックの)ETFは、1億5000万ドルを木曜日に償還しました。それも全て現金です。
現物償還は一切ありませんでした。」
(ブラックロックの広報担当のエド・スウィニー氏)
ちゃんと現金で償還していますから、安心してくださいと訴える一方で、
「現物償還はETFの特徴であり、償還を促し、残るファンド保有者を保護するために用いられる可能性があります」
と、但し書きを加えることも忘れていません。
マーケットに与える影響を抑えながら、資産を融通する方法として現物償還は実施されうる償還方法ですが、流動性が乏しい(=取引量がそんなに多くない)債券の現物を受け取ると大変です。
なかなか換金するタイミングが見つからないことがあるからです。
この但し書きが持つ恐怖が、投資家心理を非常に悪化させているわけです。
燃え上がる短期債券
ブラックロックのETFのポートフォリオに組み込まれている短期債券(コマーシャルペーパー(※)や、短期社債)ですが、新型コロナの影響を受けて、市場が大炎上を起こしています。
※コマーシャルペーパー:企業の給与支払いや短期の支出を賄うために発行される短期の債券
新型コロナの影響で、ヒト・モノの流れが滞りっているのは周知のとおりです。
イタリアの悲惨な状況、スペイン、フランスも都市閉鎖(ロックダウン)
に追い込まれ、欧州全土が鎖国状態に陥りました。
英国も加速度的に状況が悪化し、都市閉鎖間近。
世界最大の経済大国の米国も、サンフランシスコ州にニューヨーク州をはじめ、主要都市を含む州で都市閉鎖が始まっています。
経済活動が急激に停滞し、企業の業績を直撃するのは避けられません。
短期債券市場が燃え上がるのは、不可避の状況です。
企業の与信枠は引き下げられ、企業は必死になって資金を融通する方法を探しています。
救済に動く米国政府
これらの動きに対応して、FRB(米国連邦準備制度理事会)はCPFF(コマーシャルペーパー・ファンディング・ファシリティ)
を再導入すると発表しました。
CPFFは、(2008年の)金融危機の際に、短期融資市場を支えるためにFRBが用いた手段・施策です。
平たく言ってしまうと、米国政府が金融機関に代わって、企業の資金繰りの面倒を直接見る
というわけです。
ずばり言ってしまうと、国有化みたいな状態になっているわけです。
平時の資本主義の仕組みから逸脱している、もはや異常事態ということが理解できます。
翻訳支援:原文を読む際の参考に
原文の記事(Bloomberg)を実際に読んでみよう!という方のために、単語や熟語など英語表現の翻訳支援メモを以下に記します。
適宜ご参考になってください。
spooked
: おびえているexchange traded fund
: 上場投資信託unprecedented
: 前例のない、前代未聞の、未曾有のplunge
: 飛び込み、つんのめるredemptions
: 償還primarily
: 主にintraday
: 日中pared
: 削ったdecline
: 低下、減少、下落pay out
: 支払うall corners of the market
: 市場のすみずみまでcollide with
: ~と衝突するbackup facilities
: バックアップ施設communication challenged
: コミュニケーションの課題redeem
: 引き換える、償還するlook to
: ~に目を向けるunderlying bond
: 基礎となる債券steep
: 急こう配のplummet
: 急落in-kind
: 現物のin-kind redemptions
: 現物償還
facilitate
: 促すchannel
: 通す、導くtypically
: 通常distribute
: 分配するshareholders
: 株主redeem shareholders
: 株主に還元する
rout
: 大敗、敗退be roiled
: 焼かれたgrapple with
: ~に取り組むhits to revenue
: 収益への打撃weigh risks
: リスクを量るpayroll
: 給与expense
: 費用draw down credit line
: クレジットラインを引き下げるstep in
: 介入するreintroduce
: 再導入するshore up
: 支えるmeasure
: 手段、施策