近未来予測への挑戦: future.predict()
私は普段、さまざまな機械学習モデルを使って問題解決に取り組んでいます。
入力データを用意し、モデルを適切に実装し、学習・予測・評価、そして改善のサイクルをグルグル回しています。
そうやってモデルが成長してゆく様子は、見ていて楽しいし、手ごたえ・歯ごたえを伴った充実感で満たされます。
ふと自分を振り返って思ったことは、新型コロナや世界恐慌の前触れ的なものを察知して(?)、世界中のニュースをインプットするようになり、次第に近い将来起きることについて妥当な見通しを立てることができるようになってきたな、ということです。
断片的な情報をつなぎ合わせて、欠けている部分の輪郭を推測し、全体像を捉える──というを、訓練のように繰り返すうちに、段々と精度が改善していることが実感として感じられるようになってきました。
そこで、自分自身をいわば深層学習のモデルに見立てて、世界情勢のニュースや統計データを入力として、近未来を予測し、見直し、軌道修正・改善を重ねると言うフィードバックサイクルを回して、人の勘──未来を予測する力は、訓練可能かどうか、自分自身で実験を始めたいと思います。
ということで、普段使っている Python の言語文法になぞらえて future.predict()
というコーナーとして、エントリ執筆を始めたいと思います。
エントリの形で記録を残し、時間の経過とともに予測が当たっていたのか、外れていたのか? どこが当たっていて、どこが外れていて、どういう仮説の立て方が良かったのか、悪かったのか──ということを学習しながら、モデルの性能(=未来予測の力)の改善に取り組んでみたいと思います。
時代の変化速度が爆速だからこそできる取り組みだと思います。
何年も待たずして、すぐに答え合わせができるのですから、この機会を逃す手はありません。
さて初回のテーマですが、医療物資を巡る国家間の争奪戦から、近い将来の世界情勢の一端を予測してみたいと思います。
医療物資を巡る仁義なき戦い
情報キャッチが速い方は既にご存知かもしれません。
新型コロナに苦しむ国々は、医療物資(マスクや人工呼吸器など)を手に入れるべく、もはや手段を選ばないようになってきましたね。
本当に信じられないようなことが起きています、貿易の安全が保障されない時代に入ろうとしているんです。
まずは、既に明るみになった事件・事象をエビデンスとしてご紹介するところから入りたいと思います。
医療物資を奪い合う先進国・無法地帯化する国際貿易
米国のジャイアニズム全開のマスク調達
ドイツのベルリン市当局は、米国メーカー3M
に発注した20万枚のマスクが、タイの首都・バンコクの空港で米国の関与の下で強奪されたとし、米国政府を「現代の海賊だ」と非難しています。
資料
また、フランスのイルドフランス圏のバレリー・ペクレス(Valerie Pecresse)知事
が、フランスが発注していた中国製マスクが、身元不明の米国人らにカネにものを言わせて横取りされたとして、米国を非難しています。
フランスのグランテスト圏のジョン・ロットナー(Jean Rottner)知事
も、フランスが注文済みのマスクに対して、空港滑走路で米国人が3~4倍の現金を提示して、フランスに送られるマスクをその場で買い取ったと指摘し、避難しています。
資料
資料2
フランスとドイツの政府高官は、米国は大幅に市場価格を上回るカネを積んで、欧州の国が予約したマスクを奪い取っていると警戒感をあらわにしています。
米国政府当局(米国国土安全保障省)は、防護服の調達についてカネに糸目は付けず、備蓄に余剰が出るまで買い続けるという見通しをメディアに匿名で伝えています。
意図を隠す気、全くないですね、これは。。。
資料
人のことはあんまり言えないフランス・ドイツ
また、フランスもスウェーデンの多国籍企業メンリッケ
のフランス工場が持つ400万枚のマスクを押収しました。
これは新型コロナと戦うためにフランス国内にある製品や材料を全て押収することを許可する法律に基づいたものである、としています。
当然スウェーデンはこのマスク押収に激怒し、フランスとの間で外交問題に発展しそうです。
資料
ドイツも医療機器の輸出を禁止し、ドイツを経由する他国宛てのマスクを押収。
イタリア行き、スイス行きのマスクを押収しました。
EUの基本理念など、どこかに吹き飛んでしまってますね、これは。。。
資料
そのドイツ軍が発注したマスク600万枚が、経由地のケニアで行方不明になるという事件が起きています。
もう、何が何やら、スパイアクション映画の脚本みたいな感じになってきましたね。
資料
イタリア・チェコスロバキア間のひと悶着
イタリアが中国に発注したマスク68万枚と数千個の人工呼吸器が経由地のチェコスロバキアで押収される騒ぎが起きました。
こちらの騒動は、イタリアとチェコスロバキアとの協議の結果、無事にイタリアに届けられることになったというのですが、イタリア世論は怒りに満ち満ちて、チェコスロバキアを密輸取り締まりのふりをしたマスクの窃盗であるという批判が広がっています。
資料
資料2
自国最優先を打ち出すとこうなる:無法地帯化
世界中でマスクを巡って市場の無法地帯化が進んでいることが浮かび上がってきますね。
西側文明圏が、マスクをはじめとする医療物資を巡って、もめごとが絶えない様子が実に克明に伝わってきます。
これはもう、信頼関係や信用は、時間の経過とともに悪化の一途をたどりそうです。
新型コロナのパンデミック終息の見通しが立たず、医療物資があとどれくらい必要なのか見当を付けることが難しいからです。
どうやら事態が進む方向が見えてきましたね。
近未来を占うヒントがありそうです。
future.predict():グローバル化逆回転、国際貿易の無秩序化、そしてあらゆる物資を巡る紛争へ
国際規範などというものは、文字通り建前に過ぎなくなりつつあることが見えてきました。
普段の綺麗事は、どこに行ったのか、潔いほどです。
かなりのスピードで、ほぼ瞬間的とも言って良いスピードで、グローバル化の逆回転が進んでいます。
人の行き来が制限された次の段階として、物資の流通がストップするのは時間の問題かもしれないと以前から考えていたのですが、医療物資の分野でかなりハッキリとした形で物流の阻害が──それも国家間の信頼・信用が崩れる無秩序化
を伴って進行していることが見えてきました。
現在は、マスクや防護服といった医療物資に限定した無法地帯化となっているが、この無秩序な状態が、医療物資の範囲を越えないという保証はありません。
というか、今後ますます範囲を広げてゆくと考えるのが妥当でしょう。
生命と健康にかかわる重要物資であれば、何でも対象になりかねないと見るべきでしょう。
今後、多国籍企業の所有する工場や設備、物資は、新型コロナ対策という大義名分
のもとに押収されるシナリオが考えられます。
医療物資や機材だけでなく、他の物資・設備・資産についても波及するでしょうね。
それだけ先進国は追い詰められていると思います。
食糧の奪い合いが起きる可能性
この無秩序な物資の奪い合いが、食糧分野に波及してきたら、かなり危険な状態だと考えられます。
現時点で判明していることですが、農業に従事する労働者の往来が、新型コロナの感染対策の下で制限されています。
世界各地の農業生産国において、作付をはじめとする農作業が十分に進めることができず、今年の農業生産に対する懸念はぬぐいきれません。
既にアフリカ・中東地域・南アジアでは、数十年ぶりの大規模な蝗害
(=大量のサバクトビバッタによる農作物の食害)が発生し、食糧危機に発展する可能性が極めて高い状態になっています。
ロシアは早速小麦の輸出規制の検討に入り、ベトナムも米の輸出の全面禁止へ、パキスタン・インドは蝗害で大きな農業被害が発生して食糧輸出どころではなくなりました。
新型コロナパンデミックの第一波
が収まったとしても、次は食糧問題が待ち構えていることになります。
歴史は繰り返す?
新型コロナの感染被害が大きく、なおかつ国力規模の大きい国ほど、物資の確保にあたって実力行使に打って出るでしょう。というか既に手段を選ばない様子は現時点で既にチラチラと見え隠れしていますね。
このような物資の奪い合いの横行がエスカレートし続ければ、外交問題に発展します。
しかも、領土問題のような時間をかけて交渉できるようなものではなく、時間的猶予の限られた死活問題
で火種が起きます。
医療物資・機材・食糧──これを巡る外交問題は、悠長なことを言って先延ばしにはできません。
先延ばしにしたら自国民の生命と健康が危機に晒されます。先進国が一転、後進国に逆戻りしかねません。
1910年代~1930年代と類似してきた世界の空気
なりふり構わず秩序を無視し、無法地帯化する先進国間のあり様を見ていると、かつての第一次世界大戦のような大陸レベルの大戦の遠因に発展する可能性も否定できないと思います。
新型コロナウイルスの感染が拡大している欧米先進国は、すでに戦争状態
であると明言しています。
各国政府が抱く危機感や緊張感は、戦争と同じレベルということです。
個人の自由や権利をあれだけしつこく主張していた欧米先進国が、あっという間に手のひらを返すように、国家統制的な方針にシフトを始めています。
何しろ、今起こっていることは、1910年代~1930年代に起きた出来事の相似形というべき出来事の連続です。
- 新型コロナウイルスのパンデミック(現在進行形)
- 世界恐慌(現在進行形)
- ブロック経済圏の形成(現在進行形)
- 第一次世界大戦に相当する複数国家間の紛争・戦争(まだ起きていない)
- 第二次世界大戦に相当する複数国家間の紛争・戦争(まだ起きていない)
- 金本位制の終焉に相当する資本主義へのインパクト(まだ起きていない)
-
など
第一次世界大戦は、1914年~1918年にかけて繰り広げられた世界大戦であり、欧州が戦地の中心でした。
そのあと、小休止を置いて、ファシズムの台頭から、あれよあれよという間に第二次世界大戦に突入しました。
歴史をトレーニングデータと考えたら・・・再現性の高いデータ
歴史を機械学習のトレーニングデータとして考えてみましょう。
歴史を生み出している人間の本質は変化が乏しいと仮定すれば(少なくとも遺伝子レベルでは四万年前から進化なし?)、再現性の高いデータであると考えられます。
つまり、特徴量を把握すれば高い精度で予測できるというわけです。
(歴史をデータとしてみたときの特徴量は、発生した出来事の類似性、その時期の近さ、組み合わせなど)
しかし、かなり望ましくない未来予測です。
分析していて、うーむ、と唸ってしまいました。
どの国も余裕をなくしていくと、自国最優先のエゴむき出しでぶつかり合いそうで怖いですね。
怖い予測があるからこそ希望が見いだせる
しかし、怖い予測が出てくるからこそ、対策を考えることができるというものです。
歴史は再現すると言っても100%同じパターンを繰り返すわけではなく、アレンジして繰り返されると考えるのが妥当です。
そのアレンジの余地に、我々は希望を見出すことができるわけです。
今回の分析から見えてくる、人類が英知を結集して解決すべき問題は、医療物資・機材
と 食糧
の問題です。
各国は必死になって医療物資や機材を国内で安定供給できるように企業と連携して、サプライチェーンを急ピッチで組み直しています。
また、ワクチンや治療薬の研究も全世界で総力を挙げて取り組んでいると思います。
そして、続く食糧の問題については、恐らく今年の後半になってから、本格的に議論と解決へ向けた取り組みが始まるのではないでしょうか。(少なくとも、新型コロナウイルス感染の第一波が落ち着いてから)
まとめ
予測の結論から見ると荒唐無稽に感じるものの、現在起きている出来事を積み上げて、その延長線上をなぞってゆくと確かにその予測に辿りつくのだなと実感はしています。
正直当たってほしくない予測ですが、解決すべき障害点がどこにあるのかも明確なので、打ち手はあるはずです。
国としての打ち手もそうですし、個人にとっての行動のヒントもそこから見出せると思います。
(例えば、仮に今の仕事を失っても、医療物資や機材の製造や農業分野で仕事の需要が爆発的に増えるので、そこで再起をかける、など)
また、今後のニュースを追いかける際にも、どこに着目すれば良いのかという観点や感覚が養えるのではないかと思います。情報分析の体系というか、幹のような部分ですね。それが出来上がるイメージが近いです。
怒涛のニュースの氾濫に流されることなく、的確にセンサーを働かせることができるようになるのではないでしょうか。
もちろん、日々目まぐるしく変化する情勢を観察しながら、適宜予測を見直して、モデルをアップデートすることも忘れずに取り組みたいと思います。
次回もまた、ピン!と来たニュースから手掛かりを見つけ出し、近未来の予測を試みたいと思います。